マレーシアNEMブロックチェーンセンター

若いエンジニアを対象としたブロックチェーン教育機関

7月3日、クアラルンプールのNEMブロックチェーンセンターが正式にオープンし、記者会見が行われた。

センターの広さは、1万1000平方フィート(約1021平方メートル)。アジアで最大級のブロックチェーンセンターだ。

記者会見に先立ち、NEM財団の理事の一人であるスティーブン・チア(Stephen Chia)さんがブロックチェーンとNEM財団についてのプレゼンテーションを行った。

スティーブンさんは、当連載でも紹介したように、NEM財団の理事であると同時に、NEMマレーシアのトップであり、また東南アジア地域のNEMを統括する立場でもある。

 

前回の連載ではNEM Japanカントリーリーダーの古賀さんに取材したが、NEMは世界各国にカントリーリーダーを配置しており、各国でのコミュニティ作りに積極的だ。

クアラルンプールを皮切りに、他のエリアにもブロックチェーンセンターを開設する予定だという。

 

▼以前の記事はこちらから
第六回 NEM財団【前編】「ブロックチェーンセンター」KLで開業へ
https://www.the-kl.com/contents/4819/

 

 

NEM財団のスティーブさん記者会見でプレゼンを行うスティーブンさん

 

 

スティーブンさんは「NEM財団は、NEMブロックチェーンの普及のためにブロックチェーンセンターを作りました。このセンターでは、主に若いエンジニアを対象にブロックチェーンに関する教育を行います」と話し、そのためにNEM財団が実施する施策について発表した。

 

1つ目は、「NEMベンチャーファンド(NEM Venture Fund)」だ。NEMブロックチェーンを利用した若者によるスタートアップを支援するもので、出資金は合計500万米ドル。

 

2つ目は、「NEMコミュニティファンド(Community Fund)」。対象はやはり若者によるスタートアップだが、ユニークなのは、NEMのコミュニティが投票でどのスタートアップに融資するかを決める点だ。

 

NEM財団が発行する仮想通貨「XEM(ゼム)」2億5000万分が用意されており、選ばれたプロジェクトには50万〜300万XEMが融資される。こちらはすでに運用が始まっている。

 

3つ目は、やはり若いエンジニアを対象とした「NEM グローバルハッカソン(NEM Global Hackathon)」。NEM Smart Asset blockchain(NEMスマートアセットブロックチェーン)を利用したアプリケーション・コンテストのようなもので、賞金は3万米ドルに相当するXEMだという。

※イベントはすでに終了している。

 

 

NEM Smart Asset blockchain

 

 

 

無料の技術サポートチームには、すでに100件以上もの相談案件が

スティーブンさんは、以前の取材でも話してくれたように、NEMブロックチェーンには世界を変える可能性があるという。

だからこそ、NEM財団は無償でNEMブロックチェーンの普及に務めているのだ。

 

「NEMブロックチェーンは、JavaやAndroid、Linuxのようにオープンソース。誰でも無料で開発に利用することが可能です。
ブロックチェーンというと、仮想通貨をはじめとしたフィンテックばかりが注目されているが、ブロックチェーン技術は生活に必要なさまざまな分野で活用が可能です。
例えば、流通におけるサプライチェーンマネジメント、会員ポイントの管理や運営、所有権や資格などの証明書の記録、投票など。
会社や政府機関などがNEMブロックチェーンを導入を検討しているなら、技術的なサポートも提供しています」

 

 

NEMブロックチェーン

 

 

NEMブロックチェーンセンターには、NEMブロックチェーンの導入をサポートする技術チームが常駐しており、驚くことにサポートは無料で受けられる。

担当しているのは、技術トレーナーのアンソニー(Anthony Law)さんと、ビジネスデベロップメント担当のオットー(Otto Van Nostitz)さん。

アンソニーさんはこう話す。

 

「センターがオープンする前から技術サポートの問い合わせがたくさんあり、現在のところ100件以上の相談が来ています。
NEMブロックチェーンは、NEMが提供しているAPIを利用すれば簡単に導入できるという特徴があります。
システムをすでに構築済みなら、エンジニアが半日程度のトレーニングを受ければNEMブロックチェーンの導入は可能です。導入にかかる期間は、早ければ数日程度です」

 

 

マレーシアNEMブロックチェーンセンター

 

 

現在、NEMブロックチェーンを導入しようとしているプロジェクトは106。

以前の記事でも紹介した、日本のNEMコミュニティが開発したXEM用のモバイルウォレット「Racoon Wallet」もその一つだ。

 

業種は幅広く、広告・マーケティング、公正証書など認証に関わるもの、銀行・投資・蓄財系、寄付やチャリティー、トークンや会員ポイントの相互交換システム、教育、ゲーム、支払い、登録やトラッキングなど。

ブロックチェーンが生活に関わるありとあらゆるシーンで活用され得る技術だということがよく分かる。

 

NEMブロックチェーン導入を計画中のプロジェクト
https://github.com/Sateetje/awesome-nem-projects

 

 

 

ゲームの課金システムや、奨学金のプラットフォームも

注目のプロジェクトをいくつかご紹介しよう。

 

先述のビジネスデベロップメント担当のオットーさんは、Xarcadeというゲーム会社の創業者でもある。

Xarcadeは、ビデオゲームで使用するトークンのやりとりにNEMブロックチェーンを導入する計画で、まもなく新しいシステムがローンチされる。

ゲーム内で使用するトークンはXEMと交換も可能になるという。

 

 

Xarcade

 

 

インド発のプロジェクトもある。

学生と教育ローン提供者のマッチングプラットフォーム「Sernez」だ。

 

資金提供者は、学生の業績に基づいて優秀な学生を選び、より低い金利で貸し付けができる。また、ブロックチェーン上に大学など教育機関が発行した書類をアップロードすることができる。

マッチングアルゴリズムを使用し、学生のスキルや能力に応じて適切なインターンシップや職業とのマッチングも可能にする。

 

 

Sernez

 

 

気づけば、生活のインフラにNEMブロックチェーンが使われている……。

以前スティーブンさんが語ってくれた夢が、現実に近づいているようだ。

 

 

 

【店舗名】 Nem blockchain Center
【住所】 Glo Damansara shopping center, Federal Territory of Kuala Lumpur